九州とりわけ福岡、熊本両県では線刻模様や色彩を伴う幾何学的な模様が描かれている古墳石室が多いことが知られています。高松塚古墳のような写実的な壁画ではありませんが、なぜ、この地域には多いのかまだわからないところが多いようです。遠く離れた茨城県や福島県にも線刻壁画が集中していることも謎を深めます(ご関心のある方は大塚初重さんの「装飾古墳の世界を探る」祥伝社、2014をご覧ください)。それはともかく九州の装飾壁画は春、夏二回一般公開されているところが多く、我々も見学できます。ただ、撮影はできません。熊本県山鹿市のチブサン古墳(墳丘はいずれアップ)のように一日二回公開しているところでも残念ながら見学のみです。そうしたなか今回の浦山古墳のように常時公開(成田山新勝寺久留米分院の本殿で鍵を借りる)され、撮影可能というところもあります。

 久留米駅から岩戸山古墳(いずれアップ)に向かうバスの車窓左手を眺めていたら巨大な慈母観音が目に入ってきました。なんと60mもあるそうです。浦山古墳はこの成田山新勝寺久留米分院の本殿裏に眠っています。社務所で鍵を借りて墳頂に登ると動画1にあるコンクリート製の上屋が見えてきました。おそらく今であればもっと周囲と調和した建物を造るのでしょうが見学できるだけでもラッキーと思わなくてはいけません。

 そのとおりでした。見事です。上屋の中に入ると横穴石室の玄室部分の天井石を半分よけた状態で家形石棺が置かれていました。覗き込む感じになります。石棺の蓋の短辺には木の葉の模様が描かれていてしばし見とれました。体をかがめて玄室の床まで下りて内部をみていると横壁、正面の壁ともに幾何的模様が規則的に描かれていていることがわかりました。あとで調べてみると上下段は直弧文帯、中段は重圏文帯というのだそうです。蓋の裏側には朱がはっきりと残っていることが見て取れます。石室ではなく石棺内部への装飾。実に凝っています。

 それにしてもよくわからないのはどちらに開口した横穴石室なのかという点です。現在玄室の四方は動画3で見るように壁なので羨道の方向もわかりません。教育委員会に聞くと墳丘についての調査は行ったことがないのでよくわからないという一方、文化庁の文化遺産オンラインには北西に開口しているとありました。しかし現地では実感できませんでした。なにしろ玄室のみがまるで竪穴石室かのように開いているだけですので。

 アクセスは前述のように久留米駅から西鉄バスで八女方面行きに乗り二軒茶屋で下車。慈母観音を目指します。バスの本数は結構あります(撮影日20161025日)。


浦山古墳基本データ

所在地 福岡県久留米市上津町

形状 前方後円墳(帆立貝型)

規模 墳長約88m(現地説明版は60m)、後円径約64m 高さ8m、前方幅20m、高約4m
葺石あり

築造時期 5C

史跡指定 国指定

特記事項 横穴石室玄室 長さ2.8m、幅1.5m、高さ2m、横口式家形石棺1.86m・高1m・幅0.8m、現状の墳丘は雑木林のためによくわからない


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