小口積みが美しい壱岐島最古の古墳
壱岐島の古墳というと掛木古墳、笹塚古墳、兵瀬古墳(いずれもクリックすれば飛べます)等、超巨大な石室を持つ後期(終末期)古墳を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ところがこれら巨石墳は北九州からヤマト王権の指示を受けて新羅対策のために移住してきた豪族たちのもので地元首長の墓ではないというのが一般的な見方のようです。それは納得できます。決して大きいとはいえない壱岐島に本州でも九州でも滅多に目にすることのない複室(多くは三室)構造の横穴石室が5基も6基も造られているのですから。人為的な力が働いていないわけはありません。
ならば在地有力者の墓はどこにあるのか。当然の関心ということになりますが、巨石墳の陰に隠れ目立たないようです。その中にあって江戸時代末期(安政年間)に地元住職によって調査された小さな円墳、大塚山古墳がその一基といわれ、壱岐島最古の古墳とみられています。といっても古墳時代中期、5C後半の築造です。壱岐島は弥生時代の原の辻遺跡が有名ですが、その後、古墳時代前期の古墳は確認されていないのだそうです。
石室のタイプ、竪穴系横口式石室という形式からも竪穴式石室から横穴式石室に移行する過程。前期から中期に位置づけられることがわかります。それにしても変わった型式ですね。竪穴式石室の一方の小口(断面)に横口を設け、明確な羨道をもたないというのが特徴だそうです。なるほど4m弱の奥壁から開口部をみると羨道のようにも見える短いスペースがみえます。個人的に板石を横に積む小口積みは好きで、今回の大塚山古墳のそれは特に美しく感じました。説明板によれば全体に朱が塗られ奥壁の一部にその残りが確認できます。出土品は須恵器、鉄器の一部のみだそうです。一支国博物館から徒歩で北西方向に10分ほど(撮影2019年3月26日)。
大塚山古墳基本データ
所在地 長崎県壱岐市芦辺町
形状 円墳
規模 径14m 高さ2m 石室長さ 3.96m 幅1.18mから1.28m
築造時期 5C後
出土品 須恵器、鉄器
史跡指定 長崎県
特記事項 現在のところ壱岐島最古の古墳
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