竪穴式石室内の長持型石棺が見学できる貴重な古墳
はじめて室宮山古墳を訪れたのは古墳踏査を開始してまもない2012年11月のことでした。近鉄御所市駅から交通量の多い県道117号線をひたすら南に歩きましたが、西側には黄や赤の紅葉が雄大な葛城山一帯に広がり、それはそれは美しい景色でした。道はわかりやすく迷うことはないのですが、動画3の最後につけたように墳丘自身(これは2016年11月の再訪時の撮影)は前方後円墳と認識することは不可能です。墳長238mと大きいこともさることながら室宮山古墳と図示されたとおりに歩くと動画1の広場にしか見えない後円部に導かれます。この広場から前方部を含めた墳丘全体を想像しろといってもなかなか難しいのではないでしょうか。なので古墳巡りをはじめたばかりの方には古墳の重要性は別にしてお勧めはできません。私の再訪がその4年後になった一つの理由はそこにあります。あまり足が向かわなかったのです。
しかしこの古墳、竪穴式石室が見学できる点で非常に貴重です。このブログでも数例紹介したにすぎません。しかも石棺が安置されている状況を見ることができるのはおそらく室宮山ぐらいではないでしょうか。それも大王の棺と呼ばれる長持型石棺です。動画にみる縄掛け突起の大きさから全体のスケールを想像して頂きたいと思います。長持型石棺の出土が確認できる古墳は全国でも30例ほどで東国では2例(一例は既に紹介した東国最大の前方後円墳太田天神山古墳)にしかすぎません。竪穴石室は5枚の天井板で閉塞されていましたが欠損している一枚から石室をのぞき込むことができます。ただ、石室内に降りても後ろにスペースがないのが難点です。とはいえ親切なことに石室孔の横には見学者用に懐中電灯がボックスに置かれていて朱が残る石棺内部もみることができます。是非、若干の気味悪さはあるかもしれませんがご覧になったらいかがでしょう。この南石室に並び天井石しかみることができませんが北石室があります。そして埋葬施設のある円形の壇の上にそれを囲むように二重の埴輪列があり外側は盾や甲冑、内側は家形や円筒埴輪の形象埴輪が並んでいたそうです。一つだけ大型の盾形埴輪のレプリカが置かれていますが、これが所狭しと並ぶ姿はかなり特別な空間だったことをうかがわせます。肝心の被葬者ですがこのあたりは当時、葛城氏の支配していた地域だったところから始祖王、襲津彦やその父の武内宿禰の墓との見方もあるようです。アクセスは冒頭に書いたように県道を南下し国道309号線との交差点を左折し右手です(撮影2016年11月9日)。
室宮山古墳基本データ
所在地 奈良県御所市
形状 前方後円墳
規模 墳長238m 後円部径105m 高さ25m、前方部幅110m 高さ22m
ともに三段築成 葺石あり 造出しあり
築造時期 5C初頭
出土品 盾形、甲冑、家形等形象埴輪、円筒埴輪等 短甲、鉄鏃、鉄剣
史跡指定 国指定
特記事項 規模に関しては後円部径148m 前方部幅152mという数字もある。後円部には
円丘壇があり、そこに埋葬施設二基が位置する方形区画があり埴輪が並んでいた
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