なぜこれほど立体的に見えるのだろう!
 動画冒頭でおわかりのように今回の安部谷古墳(国の史跡指定の5基)は意宇川の南側の丘陵にあります。まだ夏の名残か緑濃い森の中を標識にしたがって歩いて凡そ10分ほどで古墳のある崖の裾に到着しました。帰りのバスの時間を気にしながら、先を急いだせいか、ところどころぬかるんでいて足をとられました。動画では取り損なっていますが、見学用のスチール製の階段を上っていくと、斜面に羨道や複室構造の前室が欠け、玄室がむき出しになった安部谷古墳が忽然と現れました。離れたところからの見学なのかと思ったところ、ラッキーなことに開口部の前は広場状で、入室も可能です。右手から1号→5号の順(動画では逆に左から右に撮影している)に並ぶ石室開口部は壮観です。
 失礼な話、どうせ横穴墓と思っていた私は、ガーンと打たれた感じがしました。小学校の頃に埼玉県松山市にある吉見百穴に遠足で行って以来見てきた横穴墓、この古墳踏査開始以来出会った横穴墓とは安部谷古墳はその精巧さ、完成度全く異なります。なんじゃこれはという感じです。非常に立体的に見えるのです。どうやら、開口部が屋根状になっている妻入りと平になっている平入りの組合せの効果のようです(「島根の文化財」第3集、1963)。複室構造になっている1号墳(撮り逃した)以外は単室構造ですが、失われた羨道のお蔭で、この立体構造を目の当たりにすることができるというのは幸運としか言いようがありません。岩盤を刳り抜いているせいか、石積みの横穴石室よりもはるかに重厚に感じます。撮影した5号以外は、死床が設けられています、天井は石棺式石室のように家形になっています。  ただ、夕暮れ時で辺りは暗く、玄室内は湿気が充満。正直、入室はあまり気持ちのよいものではありませんでした。それになんでしょうか。ヘッドランプが当たった天井を右から左にさっと素早く移動する物体が・・・。思わず身震いし、そのせいもあってか、最も重要な複室構造の1号墳を取り損なうという大失態を演じてしまいました(泣)(撮影2020年10月末)

PNG 安部谷古墳(松江市)所在地 21年11月8日作成

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