鮮やかな朱が印象的な石室
墳長33.4mと小型の前方後円墳ですがなかなかに美形です。住宅と畑に囲まれてよくぞ残ったと感心する墳丘は、国道22号線の赤水の信号を南西方向に県道40号線を100mほど入った所にあります。こう書くと簡単ですが、大半の古墳が宅地開発や道路整備で消滅するなか、現在の姿は地元住民や関係者の保存への強い思いが込められています。
樋の口古墳(クリックすれば飛べます)と同様に鏡山の裾の砂丘に築かれています。築造時の6C前半はすぐそばまでラグーン(潟湖)だったのではないでしょうか。注目すべきは朱が鮮やかな石室です。普段は施錠されている石室(事前に唐津市教育委員会に見学許可を提出)の羨道を屈んで進むと光の向こうにぼんやりと朱が残る奥壁が目に入りました。奥行きは3.7mほど。そしてその下をみると砂岩で造られた蓋のない舟形石棺が置かれ、ここにも朱が残されていました。よくみると前面には縄掛け突起が3個確認できました。島田塚古墳を詳説した『末盧国』(六興出版)によれば、反対側にも3個、計6個あるようです。石室全体は側壁の中央が膨らむ胴張り形式で天井に近くなるにつれ持ち送り(四方からの内傾)が急な穹窿式、つまりドーム状になっています。自然石で積まれているようです。不思議なのは辟邪を目的に塗られているはずの朱が天井に近づくにつれ、特に玄室に入った羨道側の壁には塗られていないことでした。剥落といった感じではないので、貴重だった水銀朱を節約したのではないかと思いました。
明治43年(1909)に未盗掘のままに石室天井部から発掘調査され甲冑、武具、馬具、方格規矩鏡等銅鏡、金銅製冠、勾玉等が貴重な副葬品が出土しているそうです。今回も唐津市学習文化財課の方に同道して頂き、資料も頂戴しました。多謝(撮影2019年12月17日)。
島田塚古墳基本情報
所在地 唐津市鏡
形状 前方後円墳
規模 墳長38.4m、後円部径17.4m 高さ4.5m、前方部幅16m 高さ3m
石室 全長 約6m、羨道約2m 幅約1m、玄室長さ3.7m 最大幅2.9m 高さ3.2m
築造時期 6C前半
史跡指定 佐賀県
出土品 甲冑、武具、馬具、方格規矩鏡等銅鏡、金銅製冠、勾玉等
特記事項 詳細な発掘調査が行われておらず石室は長さはじめ暫定値
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