天井石の隙間から覗いた石室は立派

 石室を含め古墳の残存状況は実にバラエティーに富んでいます。「エー」これが古墳?今回のような盛り土(封土)の部分がすっぽり失われた石室をはじめてみた人は驚き「なーんだ。この程度か」とガッカリするに違いありません。おそらく私も数年前であればそう思ったと思います。しかし開発の犠牲になって亡骸が葬られた石室を含め全て破壊された古墳からすればよほどましです。今回の御旅所(おたびしょ)古墳、残念ながら盛り土の部分は想像力を巡らすほかはありません。円墳か方墳かもよくわかっていません。ただ、動画からもおわかりのように大きな天井の板石の隙間から覗いた玄室は長さ5m。広くかなり立派なものだということがわかります。両袖式のようでその先には土砂で埋もれた羨道がみえます。残存長は4.8mあるそうですから石室全体の長さは10mもあります。

 こうした封土が流され石室が露出したままの姿の古墳は、これまで奈良県明日香村の石舞台古墳(石室長19m)、埼玉県行田市の八幡山古墳16.7m)、京都市の蛇塚古墳17.8m)鹿児島県長島町の鬼塚16.2m)などを紹介しています。いずれも古墳名をクリックすれば直接飛べます。

 古墳名の御旅所ですが神社の祭礼の際に神(を載せた神輿)が巡行する途中で休まれた場所だそうです。この古墳が陽夫多(やぶた)神社敷地内にあるというのが由来です。なお、神社の裏山は横穴石室が開口するいくつかの円墳からなる宮山古墳群があり中世には城も築かれている要衝の地です。アクセスですがJR関西本線佐那具(さなぐ)駅の北4㎞ほどのところにあります。歩けない距離ではありませんがJRの本数が少なくやむなくタクシーを利用しました(撮影201827日)。


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