逗葉の山頂にねむる大型前方後円墳

 既に紹介した長柄桜山2号墳(クリックすれば飛べます)とは違い墳丘からは相模湾を望むことはできませんが、前期古墳によくみられる地山を削り出して成形した1号墳からの眺めも実に雄大です。標高は127m。今でこそ木々に覆われていますが築造当時は山裾からも墳丘を仰ぎ見ることができたはずです。ただし墳長90m1号墳は2号墳とは違い葺石はありませんでしたから太陽に映えてキラキラ光り輝くという感じではなかったのでしょう。

 現在動画からもおわかりのように復元工事中です。当初、完成を待ってアップするつもりだったのですが完成は平成33年度(2号墳は31年度に開始し47年度)と知り(長柄桜山古墳群整備基本計画、平成233月、逗子市HP)見切り発車することにしました。といっても撮影したのは20153月と20161月ですから、その後だいぶ工事は進んだのではないでしょうか。興味深かったのは二度目に訪ねた時、葉桜住宅団地の西端にある古墳群登山道に沿って工事用のトロッコが敷設されていたことでした。古墳が築造されたとされる4C後半にはこのような設備はあろうはずもなく墳丘造成のための土砂はどのように運んだのか考えてしまいました。

典型的な前期の前方後円墳は後円部は高く前方部は見下ろすように低いという印象がありますが(たとえば名古屋市の白鳥塚古墳(クリックすれば飛べます)、長柄桜山1号墳の場合後円部から前方部にかけてなだらかに下っていて比高差は2.8mしかありません。工事中のため後円部から前方部に歩くことはできませんでしたが、遠目に見てもその点は確認することができました。もっとも1号墳と同様に後円部と前方部の比高差がない前期古墳も紹介しています。墳長が89mとほぼ同じの千葉県君津市の白山神社古墳は後円部高さは10m、前方部は7mでした。その差は長柄桜山1号墳と同じ程度です。1号墳の前方部幅は後円部径よりも19m短い33mに留まっておりその点からも前期古墳ということがわかります。不思議なのは2号墳にあった葺石が1号墳にはないことです(円筒埴輪はともに設置されていました)。人々に見せる側や片面にしか葺石がない古墳も紹介してきましたが同じ頃に同じ場所で同じ規模で造られた二基の古墳で片方だけにしか葺石が見られないというのはなぜなのでしょうか。興味は尽きません。なお埋葬施設は後円部にあることが確認されており未盗掘だそうです。被葬者は水運に関連する人物であったことは容易に想像できますが古墳時代には相模湾から逗子、横須賀市の走水、東京湾を
越え房総半島に至る交通路があったようです(逗子市HP)。
  アクセスは逗子駅バス4番乗り場から葉桜行で終点下車。1号墳墳丘までは徒歩で20分ほどです。2号墳へはそこから10分。葉桜のバス停に長柄桜山古墳方面と標識が立っています。迷ったら住宅地先の西方向にある森を目指してください。登り口に説明板があります。(撮影2015312日及び2016120日)。



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柄桜山1号墳基本データ

所在地 神奈川県逗子市、葉山町

形状 前方後円墳

規模 墳長91m、後円部径52m 高さ7.7m、前方部幅33m 高さ4.9m

後円部 三段築成、前方部二段築成

築造時期 4C

出土品 円筒埴輪、壺形埴輪

史跡指定 国指定

特記事項 1999年に携帯電話の中継基地建設工事に伴う小規模な伐採及び整地が行われた際、葉山町の歴史愛好家が埴輪片を発見したことをきっかけにその存在が知られるようになったという(逗子市HP)。
PNG 長柄桜山古墳群と房総半島前期古墳




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