初期の横穴石室が良好に保存
 静岡県浜松市、旧国で遠江(とおとうみ)にあたる静岡県西部には横穴石室を伴う後期、終末期古墳が数多く築かれたようです。今回の興覚寺後(こうかくじうしろ)古墳もそのうちの一基ですが、6C前半と横穴石室としてはかなり早い段階のもののようです。既にアップした磐田市の寺谷銚子塚古墳(クリックすれば飛べます)を見た帰りに天竜川を越えてこの古墳を訪れたのですが、墳丘はほとんど削平され前方後円墳とは誰も気が付かない様相を呈していました。興覚寺の後とはよくぞいったものです。ところが雑木をかきわけて後円部を下ってみると想像以上の立派な石室が開口していました。もっとも土砂の堆積で羨道(一部しか残されていない)は膝を屈めてようやく通過。動画1でその感じをつかめるかと思います。しかしその先には大きな空間が広がっていました。とはいえあとで調べてみると天井高は2.4mしかありませんでした。これは羨道をしゃがんで進んだための目の錯覚なのですね。これまで紹介してきた横穴石室の平均的な高さです。いずれにせよ横穴石室探索の醍醐味のひとつは羨道から玄室に入るこの瞬間です。とりわけこの玄室は動画2でおわかりのように羨道よりも右側だけ(奥壁から)極端に広い片袖式のため空間を感じることができた気がします。石室は自然石を積み上げたもので一見乱雑な感じを受けますが、現在まで崩れることなく原形が保たれてきたのですから、その強度には改めて驚かされます。

 調べてみるとこれまでアップした横穴石室の多くは6C後半以降に造られたもので、興覚寺後古墳と同じ6C前半に築かれたものは少ないことに気が付きました。一基あげておきますので比較してご覧ください。京都市の甲塚古墳です(クリックすれば飛べます)。一回り以上大きな石室ですが、同じ頃に造られたのだと考えるだけで不思議な感じがします。

後古墳のある興覚寺は浜名湖天竜鉄道宮口駅から200mほど北にあります。動画3の最後のシーンでご確認ください(撮影2017126日)。




興覚寺後古墳基本データ

所在地 静岡県浜松市浜北区宮口

形状 前方後円墳

規模 墳長35m、後円部径18m 高さ2.8m、前方部幅18m 高さ2.3m

横穴石室 長さ8m、玄室長5.6m 幅2.4m 高さ2.4m

築造時期 6C

出土品 金銅装馬具や武器、装身具、須恵器等

史跡指定 市指定

特記事項 この地域では最古の横穴石室と考えられている


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