出現期に近い京都の前期古墳
 今回の前期古墳は京都府向日市の墳長91mの前方後円墳、五塚原(いつかはら)古墳です。

前期といっても出現期に近い段階で造られた非常に貴重な古墳です。既に紹介した元稲荷古墳(クリックすれば飛べます)、寺戸大塚古墳と向日丘陵に並ぶように築かれています。元稲荷の説明で触れましたが、向日丘陵は東海道新幹線が京都駅を離れ新大阪方面へ下りはじめると車窓の右手に広がっています。三つの古墳は前方後方、前方後円という違いはあれ、100mを少し下回る墳長という点で共通しています。それらの墳墓は極めて有力な豪族が古墳時代のはじめ、乙訓で絶大な影響力を発揮していたことを示しています。
  墳丘東側には動画1で見るようなため池が巡っていますが、埋蔵文化センターの方のお話によれば中世の開墾に伴うもので築造当時はなかったようです。
既にこれまでの調査の結果、後円部は三段、前方部は二段築成で前方部は細く長いバチ型であることが明らかになっており箸墓古墳との類似性が指摘されてきました。箸墓古墳(クリックすれば飛べます)は陵墓参考地のために本格的な調査は困難なことを考えれば、墳丘の遺存状況がよい五塚原古墳の調査が注目されるというわけです。

 丁度訪れた時は後円部を発掘調査中でした。動画1でぎっしりと葺かれた葺石の状況がわかります。なるほどと思いながらしばし見入ってしまいました。20151219日に開かれた現地説明会資料(向日市のHPにアップ)によれば葺石が立体構造物としての石の山として見栄えよく見えるように随所に技術的工夫がなされているそうです。現在あるため池側から石の山が見えたというわけです。

古墳に精通されている方のために資料の最後の一文を記しておきます。いやはやとんでもない貴重な古墳だということがわかります。「五塚原古墳の墳丘の特徴は「斜路状平坦面」に象徴される前方部と後円部が分離した段築構造に象徴されます。後円部の平坦面は水平にめぐりますが前方部にはつながっていません。このような墳丘の不整合は箸墓古墳の特徴的な構造とみられ全国5200の前方後円墳の中で2例しか確認されていません。」ということは五塚原古墳はあの箸墓古墳と技術者集団が同じだったということなのでしょうか。いささか残念なのは動画でご覧のように墳丘は築造当時のように復元はされておらず、その貴重さが素人目にはよくわからない点でしょうか。アクセスはJR向日町から徒歩で15分、あるいは阪急京都線東向日からはより近く徒歩で10分です。市役所を目指し裏手にある文化資料館で古墳マップを入手して歩かれるとよいと思います。(撮影20151126日)。


五塚原古墳基本データ

所在地 京都府向日市寺戸町

形状  前方後円墳

規模 墳長91.2m、後円部径 54m 高さ8.7m、前方部幅33m 高さ2.1m-4.0m

後円部 三段、前方部二段築成 葺石あり

築造時期 3C

出土品 不明

史跡指定 国指定

特記事項 本文で触れたように箸墓古墳と本古墳にしかみられない墳丘構造をもつ



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