わかりやすい横穴石室
 今回ご紹介するのは奈良の御所市近くの市尾の古墳です。後期の6C中頃に造られた比較的小規模の前方後円墳、市尾宮塚古墳です。歩いてもすぐ近くにある、時代的には少々遡る市尾墓山を先に紹介すべきでしょうが、私の好みでこちらを先行させます。天満神社の境内に隣接する木立に見え隠れする古墳の凛とした姿は荘厳そのものです。ずいぶんと古墳を訪ね歩きましたが、こうした気分になったのははじめてのことでした。
 墳長は44mしかないので、既に紹介した超大型の前方後円墳の五条野丸山古墳の七分の一ほどの大きさということになります。時代的には市尾宮塚古墳のほうが古いそうです(全国古墳編年集成)23mの後円部には市尾墓山同様に両袖式の横穴石室があり、内部には凝灰石製の刳り抜き式の家形石棺が置かれています。修復後の姿とはいえ動画をご覧頂ければわかりますが、太刀や馬具など豪華な副葬品とともに葬られたのはどのような人物だったのか想像をかき立てるに十分な重厚さです。
 巨勢谷とよばれるこの地域は、巨勢氏の支配地域だったようで、おそらく宮塚、墓山の被葬者も関係豪族だったのでしょう。また、飛鳥、大和地域に古くに定住した渡来人の多くも紀ノ川経由でこの巨勢谷を行き来したといわれていますから朝鮮半島の影響も大きかったようです。
近鉄市尾駅から徒歩で15分ほど。天馬神社を目指すとよいでしょう(撮影2015年4月16日)。

参考文献 石野博信編 全国古墳編年集成(雄山閣出版、1995年)




市尾宮塚古墳データ

所在地 奈良県高市郡高取町大字市尾
形状 前方後円墳
築造時期 6C中頃
規模 墳長 44m 後円部径23m 高さ7m 前方部幅24m  高さ4.5m
出土品 金剛装の太刀・馬具・鈴・耳環、金銀の歩揺、鉄製の
小札・鉄鏃、水晶やガラス製の玉と土器など
史跡指定 国指定
特記事項 後円部の石室は長さ11.6m玄室は長さ6.2m、幅2.5m、
高さ3m、羨道は長さ5.4