玄門がジグソーパズルのような緑泥片岩製の石室
石室が開口ししかも見学が可能な前方後円墳が埼玉県にあるとは。驚きました。7C初頭の築造、しかも墳長は102mと畿内では前方後円墳終焉後も盛んに造られた東国でも、なかなかの規模です。ただ石室は後円部、くびれにある石室ともに普段施錠されており、真観寺の御住職に許可を頂く必要があります。今回はラッキーなことに小学生の歴史の授業のタイミングと重なり見学ができました。
開口部に近づくといきなり目に飛び込んできたのはジグゾーパズルのような不思議な壁です。説明によれば複室構造の前室と後室(玄室)の境の玄門(仕切り石)の右下部に行き来できる開口部が設けられていたものの、左上部が崩れ現在の姿のようになってしまったようです。その下部をみると段差があることがわかります。江戸時代の寛永11年(1634)に発見されたとのことですから、その凝った造りは現在よりもよくわかったのではないでしょうか。石室全体は秩父産の緑泥片岩でできていて壁石は多くが1枚の大型の板石です(前室の右側壁は2枚)、天井石も1枚のようです。動画でもおわかりのように整った四角箱といった感じです。ただ、玄門の一部が崩壊しているように華奢な印象はぬぐえません。他方、石室の天井石の上には後円部があり、よく他の古墳石室でみかける土圧による歪みもありません。この構造はいったいどうなっているのか不思議です。なお、くびれにある小規模な第二石室はいずれ墳丘とともに紹介します。なお埼玉県で見学可能な石室は少なくありませんが、どれも円墳ないしは方墳で、今回の真観寺古墳は前方後円墳という点で貴重です。緑泥片岩を用いた石室は小川町の穴八幡古墳(クリックすれば飛べます)を紹介しており比較してご覧ください。また小見真観寺古墳よりやや後に築かれた径80mの巨大円墳(墳丘は消滅)と考えられる八幡山古墳は長大な石室が残ります。同じ行田市にあり4㎞ほど南東に位置します。真観寺古墳へのアクセスは秩父鉄道、武州荒木から北へ15分ほど歩いたところです。県道7号線沿いですからすぐにわかります(撮影2019年10月16日)。
真観寺古墳基本データ
所在地 埼玉県行田市小見
形状 前方後円墳
規模 墳長108m、後円部径55m 高さ8m、前方部幅48m 高さ7m
石室 前室奥行2.7m 幅2.2m 高さ2.1m、後室(玄室)2.4m 幅2.2m 高さ2.1m
第2石室(くびれ)後室のみ残存、 墳長2.8m 幅1.76m 高さ1.12m
築造時期 石室7C初、第2石室 7C前から央
出土品 第2石室から甲冑、刀剣、銅鋺、土器(1880年に発掘調査)
史跡指定 国指定
特記事項 なし
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