黄泉の国が体験できる不思議な石室
 今回は後期古墳に位置づけられる奈良県桜井市の赤坂天王山古墳を紹介します。6C末の築造といわれ大型の横穴石室を持つこの古墳はマニアにはよく知られ、ファンも多いようです。これまで紹介してきた全てといってよい古墳が被葬者不明でしたが、この古墳は崇峻天皇の真陵ではないかといわれ、しかも石室の内部まで入ることができます。そうしたところに惹きつける魅力があるのかもしれません。

崇峻天皇といえば日本書紀に蘇我馬子の指示で暗殺され即日、倉梯岡陵(くらはしおかのみささぎ)に葬られたと記された不幸な天皇として知られています。宮内庁が治定した陵墓は天王山古墳からほど近い距離にあります。しかし専門家の大半は次のような理由から現在の陵墓が崇峻天皇の埋葬の場ではなく、それどころか墳墓ですらないとみているようです。公開されている測量図から、低い墳丘は認められるものの墳墓とは言えず、何より崇峻天皇が在位した時代の埋葬施設として考えられる横穴石室が認められないなどがその根拠のようです。他方、赤坂天王山古墳(1号墳と呼ぶ)は日本書紀が記した倉梯の地で他の古墳(2から5号)が小規模で円墳なのに対して、方墳でしかも規模が突出して大きいこと、築造時期と推定される時期と崇峻天皇の没年が大凡一致すること(6C末から7C初)、江戸時代以来、明治22年に現在の墳丘に治定変えになるまでは、赤坂天王山古墳が崇峻陵として親しまれてきたことなどから、こちらこそが真の崇峻陵だとみているようです。なぜ、治定替えを行う必要があったのかなど興味深い点は数多くありますが紙幅が足りません。考古学ジャーナリストの矢澤高太郎さんの 天皇陵の謎(文春新書、2011)を読むことをお勧めします。

「ほとんど土砂で塞がれたこの中へ身を入れるには、いささか勇気がいる」と矢澤さんが記した横穴に私も入ってみました。動画でお分かりのように開口部は50㎝ほどの高さしかありません。身をかがめてそろりそろり、しかし前をみても真っ暗闇で何も見えないのです。ライトをかざしてもです。耳を澄ますとガサッと何かが動く音がしました。心臓がバクバク。ようやく暗がりに慣れたライトの先の動くものは・・・トカゲでした。そしてその先に石棺がぼんやりと浮かびます。続きは動画でご覧ください。

なお動画1と動画2ではよくみると石室入口の状況が異なります。動画1は1度目、動画2は2度目の訪問。前日に降った雨水が流れ込んでいます。

アクセスは近鉄、JR桜井駅南口から宇陀方面行きで下尾口(さがりおぐち)下車徒歩5分。北口の観光案内所に地図があります。
 なお石室の基本的な事柄は 桜井の横穴石室を訪ねて(桜井市立埋蔵文化財センター、2010)が初心者にもわかりやすく役立ちました(撮影2015年10月28日)。


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赤坂天王山古墳データ

所在地 奈良県桜井市倉橋

形状 方墳 横穴式石室(両袖式)

規模 墳丘 東西45.5m 南北42.2m

石室全長 17m 羨道長 8.5m 幅1.8m 高さ約2m

玄室長 6.34m 幅約3m 高さ4.2m(花崗岩)

築造時期 6C末から7C

出土品 不明 

史跡指定 国指定

特記事項 玄室内に凝灰岩製 刳り抜き式家形石棺残存

棺長 2.4m 幅1.7m 高さ1.1m 



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